プライバシーコインの急騰の裏側：一時的な現象か、それとも夜明けの兆しか？

Deng Tong，Jinse Finance

最近、プライバシー銘柄の市場が目立っています。ZECは7日間で6.1%上昇、DASHは7日間で68%上昇、ZKは7日間で53.9%上昇しました。執筆時点で、プライバシーコインの総時価総額は235億ドルを突破しています。

なぜ最近プライバシーコインが急騰しているのでしょうか？今後もこの上昇トレンドは続くのでしょうか？

1. 急騰するプライバシーコイン

1.ZEC（Zcash）

ZECはZcashブロックチェーンネットワークのネイティブトークンであり、Zcashは2016年10月にローンチされた初期のプライバシー重視型暗号通貨の一つです。

ZECは11月1日に直近の高値である443ドルに達し、執筆時点では388.43ドルで、7日間で6.1%上昇しています。

Zcashのプライバシーモデルの核心はシールドアドレスであり、ゼロ知識証明（zk-SNARKs）を用いて送信者、受信者、取引金額を隠します。シールドアドレス間で送信される取引は、プライベートトランザクショントークンを保管するプールに入ります。プールが拡大するにつれ、ネットワークの匿名セットも拡大し、全ユーザーのプライバシー保護が強化されます。

この保護されたプールは現在、史上最大規模に達し、約490万ZECに近づいています。

Shielded Zcashの供給量は30%近くに達しています。出典：Zechub

Zcashの開発会社であるElectric Coin Companyは、10月初旬にZashiウォレット向けの新機能をリリースし、NearのIntentsシステムと統合することでクロスチェーンスワップとプライベートペイメントを可能にしました。これにより、ユーザーは中央集権型取引所や複雑なブリッジインターフェースを介さずに、Zcashのプライバシーレイヤー間で簡単に資金を移動できるようになりました。

この新たな利便性の発見が、10月に保護されたプール全体の拡大を促しました。10月初旬、ZcashのNear Intents上での取引活動が急増し、10月16日だけで1,700万ドルを超えました。

Psy Protocolの創設者兼CEOであるCarter Feldmanは、「人々の注目は、単にトークンを発行するためだけのプロジェクトではなく、真のインセンティブによって駆動されるゼロ知識システムなど、プライバシー技術を構築するプロジェクトに移っています。これらのシステムは、ユーザーが明示的に匿名性を選択しなくても、デフォルトでプライバシー保護を提供できます」と指摘しています。

2.DASH（Dash）

DASHは2014年に誕生した老舗のプライバシー銘柄暗号通貨です。

DASHは11月2日に94ドル近くまで上昇し、執筆時点では84.91ドルで、7日間で68%上昇しています。

Dashの復活は注目に値し、プライバシーコイン分野に大きな転機をもたらしています。長い弱気相場を経て、Dashは968日間続いた下落を終え、アナリストは「Project Three Billion」など実効性のあるネットワーク開発施策によるものとしています。このプロジェクトは、サービスが行き届いていない市場でのDashの大規模普及を目指しています。

DASHのプライバシー機能は、独自のPrivateSendミキシングプロトコルに由来します。この技術は「資金分割-ミキシング-再構成」というプロセスを通じて取引の匿名化を実現し、マスターノードと公式ウォレットのみで完結し、サードパーティサービスに依存しません。DASHのコアポジショニングは「分散型デジタルキャッシュ」であり、従来の暗号通貨が抱えるプライバシー保護と実際の決済シーンでの課題を解決することを目指しています。Bitcoinのような公開透明な取引とは異なり、DASHはオプションのプライバシー機能でユーザーの資産秘匿ニーズに応え、技術実験に特化したプライバシーコインと比べて「即時利用性」を重視し、取引速度の最適化や利用ハードルの低減を通じて、暗号通貨のオフライン消費や国際送金などのシーンでの大規模な応用を推進しています。この「プライバシー保護を基盤とし、決済実用化を核とする」ポジショニングは、2025年の世界的な規制強化と決済需要の高度化という二重の背景のもと、市場で再評価されています。

3.ZK（ZKsync）

従来のプライバシーコインとは異なり、ZKは単一のプライバシー機能に特化したトークンではなく、zkSyncネットワークの「プライバシー＋スケーリング＋エコシステム」という三重属性を背景に台頭したコアアセットです。

ZKは11月2日に直近高値の0.07ドルに達し、執筆時点では0.05275ドルで、7日間で53.9%上昇しています。

ZKのコアポジショニングはzkSyncネットワークの「価値の担い手およびガバナンストークン」であり、Ethereum Layer2エコシステムにプライバシー保護と大規模応用の両立をもたらします。

ZKの上昇トレンドは先週金曜日に始まり、ZKsync創設者のAlex GluchowskiがAtlasアップグレードの開始を発表し、機関投資家レベルのスケーラビリティ、相互運用性、取引速度がその重要な特徴であると述べました。Gluchowskiは、今回のアップデートによりLayer-2プロトコルがEthereumに依存して流動性や新たな機関資本流入、クロスチェーン取引、資産のトークン化を実現できるとしています。

VitalikはzkSyncを称賛し、「zkSyncはEthereumエコシステムで多くの過小評価されているが非常に価値のある作業を行ってきました。このプロダクトのリリースを見て嬉しいです！」「改ざん不可能性はEthereumの最も重要な特徴です」と述べました。

2. プライバシーコインの急騰を後押しする要因は？

1. 規制の推進

暗号通貨は継続的な監視を受けており、KYC（顧客確認）チェック、取引所の監視、高度なブロックチェーン分析技術が含まれます。例えば、ブロックチェーンフォレンジックの専門家は機械学習技術を用いてウォレットを追跡し、行動プロファイルを構築しています。彼らのシステムは、IDを関連付け、ウォレット間の関係グラフを描き、資産がいつ取引所に移動するかを予測できます。

各国政府も規制を強化しています。8月18日、米国財務省はAI、ブロックチェーン監視、デジタルID証明書、デジタル資産に関わる違法活動を検出するための「プライバシー強化ツール」について、パブリックコメントを募集しました。同機関は、これらのフィードバックがGENIUS法に基づく新たなガイドラインや潜在的な規則の策定に役立つと述べています。

欧州連合では、暗号通貨取引所は自己管理ウォレットからの入出金を高リスク取引と見なし、ウォレットの管理権限の確認を含むより厳格なデューデリジェンス措置を講じる必要があります。これらの規定は2024年12月30日から施行されています。

各国政府が侵襲的なツールを用いてネットワーク行動を監視し、企業がより多くのデータを収集する中、プライバシー技術は市場機会として再定義されています。

2. 半減期への期待

Coinbaseの投資リサーチ責任者David Duongは、Zcashが2025年11月に半減期を迎えると述べています。半減期が到来すると、Zcashの発行量は大幅に減少し、インフレ率は2020年代初頭の二桁から2020年代後半には一桁台に低下する見込みです。ZECのブロック報酬は4年ごとに半減し、現在のブロック報酬は3.125枚、次回の半減期後は1.5625枚に減少し、1日あたり約1,500枚の供給減となります。今回の市場動向は「半減期相場」への先行反応と見なせます。

3. 大手企業の参入

10月、a16zが発表した最新の暗号レポートによると、プライバシー保護が再び注目されており、大規模な応用の前提条件となる可能性があります。注目度の高まりの兆候として、2025年の暗号プライバシー関連のGoogle検索量の急増、Zcashのシールドプール供給量が400万ZEC近くに増加、Railgunの月間取引量が2億ドルを突破したことなどが挙げられます。同時に、Ethereum Foundationは新たなプライバシーチームを設立し、PaxosはAleoと協力してプライベートかつコンプライアンスに準拠したステーブルコイン（USAD）を発表、外国資産管理局は分散型プライバシープロトコルTornado Cashへの制裁を解除しました。暗号技術の主流化が進む中、このトレンドは今後数年でさらに加速すると予想されます。

3. 今回のプライバシーコイン相場は持続するのか？

10月、HayesはZECに強気な予測を出し、Zcashの価格は数時間で272ドルから355ドルのピークまで急騰し、同期間において時価総額上位50銘柄の中で最も優れたパフォーマンスを示しました。暗号通貨トレーダーのAB Kuai Dongは、「シリコンバレーの伝説的投資家」の支持が「皆を巻き込み、FOMO（取り残されることへの恐怖）による1か月にわたる市場熱狂を引き起こした」と指摘しています。

短期的には、今回のプライバシーコイン相場の上昇は市場心理、半減期への期待、政策の推進などの要因と関連しています。しかし長期的には、実際のユースケースや政策動向などがプライバシーコイン相場の根本的な決定要因となります。

現時点で、プライバシーコインは世界の暗号通貨取引のわずか11.4%を占めるに過ぎず、市場シェアの成長速度も暗号市場全体に大きな影響を与えるほどではありません。しかし、その背後にある技術――リング署名、ステルスアドレス、ゼロ知識証明――は、主流の金融プライバシー認識を根本から変える可能性を秘めています。