USDT発行のテザー社、AI人型ロボットに巨額出資

テザー社は14日、ドイツのAI搭載人型ロボット開発企業ニューラロボティクスに、約12億ドル規模の資金調達ラウンドの最終交渉段階に入ることが分かった。

ステーブルコイン最大手が描く新戦略

The Blockの報道によると、この投資によりニューラの企業価値は80億〜100億ユーロに達する 見通しだ。

ニューラロボティクスは産業、商業用の認知ロボティクスプラットフォームを開発している企業で、将来的に家庭用ロボット市場への参入も視野に入れている。

1月には1億2000万ユーロの調達に成功し、リンゴット・ファンド、ブルークレスト、C4ベンチャーズ、ボルボ・カーズ・テック・ファンドが参加していた。

これまでに世界140社以上へ投資したが、今回の案件は同社の従来の 仮想通貨 領域を超えた事業拡大の中で、最大級かつ最も戦略的な投資になると見られる。

テザーCEOのパオロ・アルドイーノ氏は「これは単なる資金提供ではない。今後10年間のインフラ構築に関わるものだ」と述べ、長期的な成長戦略を示した。

規制圧力下での事業多角化

世界的な規制強化でテザーの主力である ステーブルコイン 事業の利益成長が鈍化する中、同社はAIやロボティクスといった高成長分野への投資を加速している。

ロボティクス市場は2030年までに1270億ドル規模に成長すると予測されており、分散投資先としても魅力的だ。

テザーは2万基のGPUを搭載したオープンソースAIプラットフォーム「QVAC」を開発中だ。

今回の投資は 分散型金融（DeFi） 主権とAI民主化を実現するための基盤整備の一環として位置づけられる。

同社はステーブルコインインフラを活用し、ロボット・アズ・ア・サービス（RaaS）型の新たな取引モデルを促進する計画も示している。

2030年までに500万台生産へ

ニューラロボティクスは2030年までに500万台の人型ロボットを生産する目標を掲げており、これが実現すれば新興ロボティクス産業の中心的存在になる。

同社の評価額と今回の巨額投資は、テザーが通常の投資領域を超えて成長分野へ進出していることを象徴している。

業界アナリストは、今回の投資を「テザーの事業モデルにおける最も明確な戦略転換のひとつ」と評価している。

ステーブルコイン発行者の枠を超え、AIとロボティクスの融合領域に踏み込むことで、テザーは次世代技術インフラの主要プレーヤーとなる可能性がある。

今回のラウンドが正式に完了すれば、欧州ロボティクス分野で最大級の投資となり、ニューラの産業・消費者市場の展開を大幅に加速する見通しだ。