リスク投資がもはや「リスク」ではなくなったとき、誰の利益が損なわれるのか？

Berachainは資金調達において、あるファンドに特別な返金権条項を付与し、そのベンチャー投資のリスクをほぼ「ゼロ」にした。

執筆：Nicky，Foresight News

11月25日、Unchainedの報道によると、公開された書類によれば、Layer 1プロジェクトのBerachainは、シリーズBラウンドの資金調達においてBrevan Howard傘下のNova Digitalファンドに特別な返金権条項を提供し、同ファンドの2,500万ドルの投資がほぼ「ノーリスク」となった。この「陰陽契約」は暗号業界で広範な論争を巻き起こし、市場は再びスター・プロジェクトの裏にある資本ゲームを見直すこととなった。

Berachainの共同創設者であるSmokey the Beraは、報道の正確性を否定し、Brevan Howardは依然としてプロジェクトの最大の投資家の一つであり、その投資は複数の複雑な商業契約に関わっていると強調した。また、Nova Digitalの条項はトークンが無事に上場できなかった場合に備えたものであると述べた。

Berachain側は、Novaファンドが資金調達前に自ら接触し、このラウンドのリード投資を提案したこと、その投資は統一された条項に基づいていることを言及した。さらに、論争を呼んだ付随契約はNovaのコンプライアンスチームの要求を満たすためのものであり、投資元本を市場損失から守るためのものではないとした。Brevan Howardは現在もBerachainの最大トークン保有者の一つであり、市場の変動の中でBERAを継続的に買い増しており、報道が示唆するような撤退はしていない。同時に、他の投資家が最恵国待遇条項（MFN）を享受しているという報道内容は完全に事実無根であるとした。

しかし、この説明は市場の情報の不透明さに対する疑念を完全には払拭できなかった。

Berachainは2021年の「吸煙熊」NFTプロジェクトに端を発し、その後Proof of Liquidity（PoL）コンセンサスメカニズムと三トークンモデル（BERA、BGT、Honey）により、1億ドル超の資金調達を達成した。2024年3月には、評価額15億ドルで6,900万ドル超のシリーズBラウンド資金調達を完了し、Framework VenturesとNova Digitalが共同リード投資家となった。

BERAは2025年2月6日にBinance、Upbitなどの主要取引所に上場し、初日の終値は8.7ドル、最高値は9.19ドルに達したが、3月末にはトークン価格が下落トレンドに入った。執筆時点で、Bitgetの相場によるとBERA価格は1.03ドル、時価総額は1.38億ドル、FDVは5.34億ドルとなっている。

公開された書類によれば、Nova Digitalは2024年3月にBerachainへ2,500万ドルを投資し、1枚あたり3ドルでBERAトークンを購入した。シリーズBラウンドの共同リード投資家として、同ファンドは2024年3月5日に署名されたサイドアグリーメントにより、TGE後1年以内に全額返金を要求できる権利を得た。これは、BERAトークン価格が振るわなかった場合、Nova Digitalは2026年2月6日までにBerachainに全投資元本の返還を要求できることを意味する。

BERAの現在価格は、Nova Digitalの投資価格から約66%下落している。現価格で計算すると、共同リード投資家Framework Venturesの保有トークンは帳簿上で5,000万ドル超の損失となっている。

Berachainのトークノミクスによると、投資家に割り当てられたトークン総量は1.715億枚（総供給量の34.3%）で、1年間のロックアップ期間が設けられている。Nova Digitalが返金権を行使した場合、BERAトークンの割り当てを放棄する必要があるが、2,500万ドルの現金返還を受けることができる。

複数の暗号業界の弁護士は、投資家にTGE後の無条件返金権を提供するのは極めて稀だと指摘している。伝統的なベンチャー投資では、投資家はプロジェクトの失敗やトークン価値の下落リスクを負う必要があるが、この条項は実質的にNova Digitalに元本保護を与えている。

もう一つの論争の焦点は、Berachainが他のシリーズB投資家にこの特別条項を開示すべきだったかどうかである。匿名のシリーズB投資家2名は、プロジェクト側からNova Digitalが返金権を持っていることを知らされていなかったと述べている。暗号弁護士は、これは証券法上の「重要情報」の開示義務に違反する可能性があり、一部の投資家契約における最恵国待遇条項（MFN）にも抵触する可能性があると指摘した。

興味深いことに、今年3月に同プロジェクトの共同創設者Smokey the Beraはインタビューで「もしもう一度やり直せるなら、そしてチームがゼロから始められるなら、これほど多くのトークン供給をベンチャーキャピタルに売らなかったかもしれない」と語っている。

資金調達の論争以外にも、Berachainのエコシステムの発展も課題に直面している。DefiLlamaのデータによれば、総ロックバリュー（TVL）は2.75億ドル水準を維持しているものの、24時間のオンチェーン手数料収入はわずか987ドルにとどまっている。

同時に、Artemisのデータによれば、Berachainは年内で3.67億ドルの純流出となっており、初期にBerachain上で展開された一部アプリケーションはすでに閉鎖または他のブロックチェーンに移行し、コミュニティの活発度も明らかに低下している。プロジェクト側は機関資金の導入で状況を打開しようと試みており、今年10月には米国株式上場企業Greenlane Holdingsが1.1億ドル規模のBERA財庫戦略を開始し、BERAを主要準備資産とする計画を発表したが、トークン価格は依然として低迷から抜け出せていない。